SHINE and STAR
◇◇◇

どうと言う話ではない。
およそ5mほど吹き飛んだところで魔物は吹き飛ぶのを止め、支障なく活動を再開する。

アレイド「ケ、見た目に似合わず頑丈なヤツっ」

恨めしそうに言う。
暴風として参上したアレイドは左足を軸として利き足を蹴り出す、決して軽くはない一撃を行なっていたのだが、その実、攻撃を上回る防御が相手方にはあったようだった。

だがアレイドの言う通り、相手方の見た目上ではそのような防御、装甲があるとは思えない。

その相手方、魔物は、言ってしまえばナメクジじみた軟体系で軟弱そうな外見をしていた。
なのに硬い。吹き飛びはしても硬い。
まったくもって裏腹である。

「あ、あ。だ、誰?」

そんな中、突然の事に理解が及ばない少年がさも不思議そうに問う。
バケモノが到来した時点で既に不思議だというのに、ソレを弾く為に到来する人物があれば謎が増えるばかりなのだ。

アレイド「ん? おう、まぁ救いのヒーローとでも思っとけ」

だが謎は未知のままに。いや、未知は謎のままに。
アレイドはただ、にひひ、と歯を見せて笑った。

“、、”

変わらず、ナメクジは這って動く。
緩慢な動きではあるが、バケモノとしてはその方が焦らす恐怖がある。

ナメクジは、やはり手とも足とも言えない部位を展げて今度は細い一本の触手を作り上げた。

……まったくもって裏腹である。

本体の緩慢な動きを無視して、触手は貫くように速い攻撃と為った。

アレイド「!?」

しかも触手の狙いはアレイドには向かず、未だ少年に向いたまま。
知能がなかったのだろう、ナメクジは新参者の存在を障害、いや存在そのものを認識していなかったのだ。

当然、それはヒーローにとって都合が悪い。

アレイド「っ、んなろ!」

ならばアレイドは飛ぶ。予想外のスピードで迫る触手より速く少年へ到達せんと。

ぐん、と気分よく風を切る触手による暴行。
ざ、と焦燥と瞬発に駆動する短い足音。
その結果に、地を叩く音。

アレイドは少年を抱えて飛び、触手は少年が元いた場所の地面を叩く。
つまり魔物の加害は損ねられたという事。
予想外の速度とはいえ極端に速かった訳ではなかったのだ。……アレイドからすれば。

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