SHINE and STAR
◇◇◇


アレイドが向かった先に当てがあった訳ではない。
ただそこにいるかもしれないという勘だけで進んだ、その場所にアレイドはいた。


“──、───、──”


……三つの異形と共に。

フィル「────これが、魔物。これでは本当に、」

化物ではないか、とフィルは漏らす。嘘でも何でもない、ソレらは本物のバケモノなのである。

シルク「────っ」

牛。暴漢。披虐。血。
ふと、他人事のように思い出して吐き気を催した。

つい昨日の出来事、もとい惨劇を払拭しきれるはずもない。
必死だったことで記憶が曖昧なのは確かなのだけど、私の恐怖心はあの時と変わらず、薄れることなく再現されてしまう。

“、、、”

のそり、のそりと鈍く這い動き、別々の三方向からその間を詰めるように集合していく魔物たち。
その様子は、取り囲んで敵を追い詰めているようにも見える。

アレイド「よう。割と遅かったんじゃねぇか?」

単純に、見えたままが真実。
魔物たちが集う中心には紅い敵が、アレイドの姿があった。

フィル「アレイド、これは」

アレイド「そ。これが魔物だよ。今後のためによく見ておけよー。あと、そこの少年のコト頼むわ」

紅い後ろ姿は異形が囲む圧迫にも動じず、今まで以上の冷静さを以ってその場に立つ。
信じられない、と思った。
まだまだ距離が遠く、眼中にさえ入っていない私は恐怖心に負けて動くことすら出来ないのに。

フィル「少年……あ、ああ、分かったが。お前は、その、大丈夫なのか?」

アレイド「なに、心配してくれんの? でもまぁ、その配慮は少年とシルクに向けてやってくれ。俺は心配無用」

フィル「……、分かった」

フィルは明らかに戸惑いながらも、アレイドに言われた通りに少年の手を引いた。
その少年はぼう、とアレイドの方を見つめたままフィルの影に隠れる。……私の目には、少年もまた魔物に動じていないように見えた。

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