SHINE and STAR
がたがた。
歯が噛み合わなくなってくる。
自分への被害はほぼないだろう。なのに、それが分かっていて尚、背中から這上がる悪寒は静まらない。

シルク「────、く」

……対象的で困る。
魔物、しかも三体から暴虐の対象にされるアレイドは魔物など気にも留めない。私より魔物に近かった少年は恐怖心を持っている様子がない。初見のフィルは多少の怖じけはあっても充分に魔物と対立出来る状況にある。
なのに私は────何なのだろう。

フィル「姫様も私の影に。ここは……ヤツを信じましょう。それしか、」

それしか、私には出来ない。

見るな。見るな。見るな。

勇敢に立ち向かうなど以っての外、眼前の三体を意識する事そのものを拒絶、断絶、遮絶しろと脳が働く。

見れば恐怖に呑まれる。
見たら怪我をする。
見ると酷い目に遭う。
見て後悔する。
見た時にはもう遅い。

警告じみた音が脳に響いてくる。
耳障りとは思わない。
私は私の……私だけの為に耳を澄まして警告を聞き入れた。
けれど『警告』と呼ぶには語弊があるな、と他人事のように思って忘れる。
だってそれは間違いなく────“自己防衛”なわけで、私“だけ”の手段なわけで、

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