SHINE and STAR
アレイド「シルク」

シルク「あ」

紅い声に呼び戻される。
蕩けかけた脳が蘇ったつもりになって思考が混乱する。

……違う。

アレイドの声で目が覚める。
恐怖でくしゃくしゃになりそうだった私は、この声で少し自分を取り戻せた気がした。

アレイド「怖いのは分かる。こんなモノ忘れたいかもしれない。────けど、目は反らすな。ホンモノを直視しろ。生半可な想像は、瞼の裏に張り付いちまうから」

アレイドは背中を向けたまま見透かしたように言う。
その言葉にはどこまでの意味があったのか、今の私にはよく分からなかった。
けれども、アレイドの言葉を鵜呑みにすることなんて出来ない。

シルク「…………」

ごくり、固唾を呑み込んで目を見開く。

ずるり、ずるり、地面を湿らせながら這い動く灰色のイキモノが一匹、二匹、三匹。
人間大の、粘着質の外皮で身体を覆った醜悪な、と言うより不気味な外見。
怖いのは相変わらずながら、以前の“牛”ほど迫力はないソレら。
……なら、少しは。

アレイド「平気だ、シルク」

アレイドは少しだけ振り返って私に言う。

アレイド「俺がいるから」

その言葉、その微笑む顔で私は騙されたように安堵するのだった。

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