SHINE and STAR
◇◇◇


鈍い三匹は、獲物をある程度追い詰めたところでこぞって活動をやめる。
……というのは前進運動だけ。
三匹はぐちゃぐちゃと気味の悪い音を立ててバラバラに“展開”を始める。
それが攻撃の準備であることは割とすぐに察した。状況から判断するに、狩猟者は狩猟すること以外に手段はないのだ。

アレイド「しかしてヒーローは悪者を退治するのだった、っと」

私より何倍も早く攻撃を予測したであろうアレイドは、それでもなお軽い調子で言う。
けれども身体は準備万端。
ぐん、と重心を落として姿勢を低くし、右手で光る刃先が敵を睨んでいる。

シルク「────」

ごくり、また固唾を飲み込む。
全てが鈍い三匹は攻撃の準備────どんな攻撃手段かは不明────をゆったりと行い、焦らして、緊張させる。無論、私だけを。

フィルは私と少年の二人をしっかり守れるよう、持ち前の大きな身体を広げ、けれどもすぐ動けるようにと全身に力を入れっぱなし。

「あのヒト、すごいんだ」

シルク「ぅん……?」

何かと思って振り向くと、少年はやはりアレイドを見つめたまま夢心地な様子で……話し始めたかと思えばそれきり黙ってしまった。

すごい、か。
魔物を見たのは初めてであろうに、自慢げに話す少年は魔物を前にしても恐れない。
それはヒーローを名乗る存在の恩恵なのだと、皆まで言わずして伝わった。

“、、!”

その時、一匹がついに攻撃を始めた。
“展開”された異形の身体を伸ばし、細く長い武器として獲物へ届かせる。
触手と言えば話が早い、ただ真っ直ぐに獲物を求める手。
異形本体の鈍速ぶりとは大きく違い、触手は異常に速かった。

“、!”

その一匹に感化されたか、もう一匹も触手を伸ばし、さらにもう一匹もと連鎖して攻撃を開始する。

都合、三撃。
規律がない、と言うよりかなり野生的。その場の直感で動いて、そのおかげで仲間意識は皆無。
しかし攻撃は前方、左右と三方向────回避の方法は制限されてしまう。

規律がないとはいえ、あの速さでは一撃ずつ回避する余裕などない。つまり、三撃をほぼ同時に回避しなければならない、ということになる。

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