SHINE and STAR
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今日という旅立ちの日は色々と巡り巡って、いよいよ太陽も地平線の向こうへ沈んでいこうとしていた。
晴天だった空は赤らむ太陽を映えさせ、同じ色に染まる町はやがて家庭の時間を迎え始める。

けれど私、シルクの帰る場所は家庭ではない。
結局一日では故郷を離れられなかったけど、旅は旅らしく、同じ場所に戻ってはいけないのである。

というコトで、本日は下宿をしよう。

フィル「なに、二部屋しか空いてない?」

フィルの大きい声が遠くから聞こえる。

現在、フィルは部屋取りをしている最中であり、私はアレイドと隅っこに待機中。
ちなみにこれは“雑用は従者の務め”とかそんなつまらない理由ではなく、また何故か注目を浴びるのは危険なのだ、という判断の上での隠匿及び避難なのである。

……どうやら、部屋が足りないみたい。
と言うと、一人につき一部屋を確保するつもりなのか。

フィル「なに────いや────それは」

「────」

ああ、宿主さんがあからさまに困っている。
何を言っているかまでは分からないけど、フィルの大きな声と恐らく注文に困っている。
気の毒にもフィルは一向に折れないらしく、それはつまり無理強いをされているわけで。
部屋を空けろー誰か追い出せー部屋を空けろー他の宿に移らせろーみたいな感じかもしれない。

アレイド「交渉とか苦手そうだな、アイツ」

その様子は自他に然り。
顔をしかめながらアレイドは呟く。

……たしかに。フィルは強い自我と尊厳を持ったヒトなので、譲歩の精神はお父様など目上の存在にしか適用されない。
貫く、圧倒する、蹂躙する、がフィルの基本装備なのであった……!
ああ、頑張って宿主さん!

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