SHINE and STAR
───────


嵐の後には必ず静寂が訪れるものだと現実は語る。

フィル「────」

そこそこ夜も更け、隣の部屋どころか宿全体まで響いた大騒ぎは、ちゃっかり空気を読んだのか、自然消滅したのである。
その嵐の本体は今やぐーぐーと寝息を立てて熟睡していらっしゃる。

騒ぎが治まってからは、アレイドが着替えなど必需品を“カードの中から”取り出すという秘術を目撃し(いや、出発前にも中に入れる秘術を目撃しているのだけど)、魔法の便利さに関心した私。
カードは、荷物が最大限にあろうと最小限に収められるという、旅にはとても心強い味方でもあったわけだ。

シルク「────ふぅ、」

その後、フィルがアレイドを廊下に摘み出したことでまた一悶着があったらしい。場外乱闘はいけません。
なぜそうなった、って私が入浴したから。
先の激しい口論の通り、一方が一方を覗かせないようにと物騒な争いが焼き直しされてしまったようだ。
……いや、それはそれで自身への心配はなくなったのだけど、逆に私が色々と心配する羽目になったりする。

それでいて、今は何事もなく済んでいるのが不思議。電気を消してみんな一緒に就寝の時間を迎えている。
ただ申し訳ないことにここは一人部屋。なのでベッドは私の独壇場。フィルとアレイドは適当なスペースを見つけての雑魚寝を強いてしまっている。

アレイド「……シルク、まだ起きてたのか?」

シルク「ぁ…………はい」

と、私同様、まだ眠りに落ちずにいたアレイドが話し掛けてきた。
身体は横になったままで、アレイドはどこにいるのか全く分からないけれど、それはともかくアレイドは続ける。

アレイド「疲れてないか? 今日は色々とあったワケだし。そこのフィルなんかシルクには一歩も近づかせるかー、って張り切ってたのにあのザマだしよ」

シルク「……二人分気疲れをしたのだと思います。彼は……その、私のことをよく気遣ってくれますから。あっ、それなら────ええと、アレイドさん、だって同じことでは」

アレイド「む」

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