SHINE and STAR
本当は、誰かに見せるはずだったカードを取り出す。誰に見せようとしていたのかは、記憶から消去した気がする。

俺に呼応したのか、それは揺らめく熱気のような光を発していた。
色は朱。
何かの為に必死で覚えた『魔法』だ。もう見慣れている。
同時に、錆び付いた刃を片手に握った。震えながらも、力強く。

空を斬り。
頭の中が真っ白になり。


剣が唸りを上げて燃え盛った。


怒りに全てを委ね、異形へと刃先を向ける。
正直なところ、怖くてたまらない。だがそれ以上にヤツが憎かった。単なる八当たりでもよかった。

“、、!”

ヤツが短く発音した瞬間、トドメを刺す勢いで飛んで来た。
……んなコト、知るか。

思いきり────剣を降り下ろす。
ヤツは中空で醜いカラダを二分させた。

ぐちゃ、という肉が潰れる音。
ばきっ、という骨が砕ける音。
その両方がヤツにあるのかは分からないが、そんな音が刃から響いた。雑音(ノイズ)が降る空間の中でも、この気味の悪い音は俺の耳をつんざく。

そして、俺の中では運命を分けた音がした。
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