SHINE and STAR
スレッド「今の内に、早く逃げなさい……」

シルク「…………」

何とか娘だけでも助けようと道を切り開いたが、あまり状況は変わらない。
やはり娘は前進し、結局は父のもとへとたどり着いてしまった。

スレッド「馬鹿者! 何故逃げぬ!」

かたかたと身体を震わせながらも、シルクは心底嫌そうに首を横に振った。
……逃げる事は、出来ないのだ。
勿論、父親を見捨てられなかったから、という理由もある。が、本当は独りが怖かっただけ。弱き姫君は死よりも独りになる方を恐れたのだ。
だからこそ、姫君は自らの身体を投じてスレッドへと覆い被さった。

その間にも、死神はふらふらと死へ近付いてくる。
獲物を仕留めるには、片眼だけでも事が足りる。
それを証明するかのように腕を上方へ引き────

後にも先にも、満ちていたのはやはり死。

降り下ろされた腕は、シルクの背骨を砕き、衣服を引き千切り、肉を切り裂く。
悲鳴をあげる暇さえない。
助けを呼ぶ余裕さえない。
ただただ、殺されるだけ。

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