SHINE and STAR
シルク「────」

不思議な事に牛だったモノは燃えているが、シルクの関心は別の方に。

呆と見つめる。
やはり大きな背中。
いつか見たことがある、懐かしい背中。

シルク「アレイド────?」

ふと、昔の記憶が名前を呼んだ。

この響きは忘れることなく。
この発音は忘れてはいけなく。
呟いても届かない、遠い遠い、遥か向こうにあった────

「大丈夫だったか?」

くるり。
彼がゆっくり、けれど軽やかに首を回し、身体を回して振り返る。
……シルクの目には、その姿がどうしても眩しく映った。
翻された上着が、王子さまのマントのように思え、暁に染まる朝日のような、はたまた大地を照らす光輝の太陽のような髪が、象徴的で。

シルク「ぁ、あ……」

本当に、眩しくて。

「……? 平気、だよな?」

本当に、輝かしくて。

シルク「…………はいっ」

「はは、そりゃあよかった」

思わず笑い返したくなるその笑顔は、本当に太陽だった。

「……っと、まず初めにやるコト」

だがまだ彼の仕事は終わっていないらしく、傍らの怪我人を見やるや否や、おもむろに“何か”────紙一枚を取り出して歩み寄った。
紙、では語弊があるか。
それは異世界の代物、『魔法』の素体、『カード』なのだから。

カードは白い光を帯びていた。
その光で負傷箇所に触れてやると、不思議な事に体は無傷へと戻っていくのだった。

スレッド「む……これは……?」

重傷、軽傷も関係なく、全て一様に治癒していく。
簡素で早急なそれはもはや応急処置のレベルではなく、完全なる治療だった。

これこそ、魔法の力。
先の牛と同様に現実から遠く離れたモノ。にも関わらず現に存在してしまっているモノ。

「よっし、もういいだろう。次だ次」

次、とは母親、コットンの事。
初めからそのつもりであったかのように、彼は当然の事として救済活動を続けた。
手際が良いと言うか、無駄がないと言うか。
姫君の守護、異形の討伐、負傷者も治療……王子の活躍は突然かつ鮮やかすぎる。
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