SHINE and STAR
「どうした?」

ふと、優しい声が風に流れて来た。だけど気のせいかと思って返事はしなかった。
優しさなんて辛いものだから、『お姫様扱い』することなのだから、無意識に拒絶していたのかもしれない。

「答えたくないなら、それでいいけど」

優しい声は、ため息まじりでも悪い雰囲気などなく、やっぱり優しいものに間違いない。……それは余計に辛さを増してしまうのだけど。

だから返事はせず、無視し続ける。

「あー、嘘。実は答えてほしい」

優しい声は男の子らしかった。
それは別に……どうでもいい。
無視されても居座り続ける優しい声に、怒りはなくても強い反発感が膨らんでくる。

なんで離れないの?
早くいなくなってほしい。辛いよ、優しさは痛いよ。
また……また泣いちゃうじゃない……せっかく逃げてきたのに……苦しさを我慢してきたのに!
お願いだから、早くいなくなってよぅ……!


「シルク」


え……?
突然の切り出しに思わず声が漏れてしまう。

「あり、違ったか? さっき他の奴がそう呼んでたから、多分そうじゃねぇかと思ったんだが」

確かに、シルク、は私の名前、だけど。

私は優しい声には振り向かず、ただ首だけを横に振ってみる。
何か、よく分からない想いが、ココロが動き始めている気がした。
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