SHINE and STAR
……話を戻そう。
そもそもの原因、というのはこの枕……ではなく薄い紙切れだ。

大きさはちょうど手のひらに収まるくらい。それに薄い。
って言っても意外と頑丈で、ちょっとやそっとの力じゃ折れ曲がりもしない。
これは表裏で区別があり、裏面には黒と白の彩色が為されている。
それはそれぞれの色が主張し合い、対立しているようなイメージを浮かべさせていた。
対して表面には縁取られた窓があり、その中に“絵柄”が描かれている。
そしてこの紙切れは外見から名付けられ、『カード』と称された。

……いや、全くもってそのままなのだが。創意工夫も何もない。
作者曰わく、

“あ? 名前なんて飾りだって。それに、判りやすいほうが覚えやすいだろうが。ほら、単純明解っつー言葉通りにさ”

なんて。
こいつに何を言っても無駄だな、と思ったのは当たり前である。
とにかく、俺はそのカードが原因でぶっ倒れているわけ。
決して安物枕とは何の因果関係もないから気にするな。
……って。それだけじゃ理由にならねぇのだが。

「そうだぞー。説明はちゃんとしなくちゃいけないんだぞー」

「…………。人の心を勝手に読み取るんじゃねぇ。ってか、いつの間にそんな迷惑としか思えない超能力を覚えやがったか!」

で。
理由を詳しく説明すると……まあ、何だ。俺は今、とてもメルヘンなことをしているわけになる。
どんなメルヘン?
それは……簡単に言えば『魔法』の使用に挑戦している、と言うのか。
ああいや、事実挑戦中なのだが。

カードは単なる紙切れではなく、不可思議な能力を兼ね備えている。
それが『魔法』。
にわかに信じ難い事柄だけれど、実際に目の前にあっちゃあ、信じる他ない。現実は正直なのだ。

この薄っぺらなカードの中には様々な“動力”が込められていて、その名前を『魔力』と呼ぶ。らしい。
魔力は魔法の基盤とか器みたいなモノで、魔力がなければ魔法も使えない。
魔法とは使い方なわけで、本当にメルヘンなのは魔力の方だ。
魔力さえ無ければ魔法は存在価値そのものがない。
じゃあ、魔力だけあれば魔法が使える? と言えば、実はそうでもない。
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