SHINE and STAR
うーんと首を捻っていかにもな思案のポーズをしたかと思えば、一瞬、アレイドの眼が鋭くなった気がした。

まもの、という言葉自体は聞き慣れない発音ながら、何たるモノかは容易に想像できてしまう。
それは他でもない、お父様やお母様を襲った異形の存在に間違いない。

スレッド「あの“牛”は魔物と称されるか。……ふむ。あのような生物が現実に存在するとは、やはり信じ難いものだ」

アレイドは静かに目を瞑り、一呼吸置いて口を開く。

アレイド「奴らは突然変異体でな。ここ最近になって生息域を拡大、頭角を現し始めたと言うか、ある地域から広がるようにして各地で被害が出てる」

スレッド「そう言うからには、魔物は相当数なのか? しかも被害が出てるのでは、」

アレイド「ああ、そうだ。昨日も見たように奴らは端っから人間を狙ってやがる。数は確認できねぇが、少数じゃねぇのは確かだ」

むぅ、とまた唸る。
噂すら届かなかった未知の異常に、お父様は苦悩せずにはいられない。

コットン「被害を確認出来たと言うのなら、その情報は流出しているはずですよね……にも関わらず私たちに、この国に“魔物”という概念は存在しなかった。……何故です? 何故貴方は知っているのですか?」

だからこそ疑問が残る。
どうして今まで分からなかったのか。
どうしてそれをアレイドが知っているのか。

アレイド「……鋭いな」

お母様の目敏い質疑にアレイドは苦笑いする。
でも特に隠すつもりはなかったのか、すぐに話を続けた。

アレイド「被害が分かったのは、俺がその場にいたから。この国の皆が知らなかったのは、伝言者がいなかったから。……つまり、今までの被害者や目撃者のほとんどが殺されたからだ」

空気が沈む。
質疑の答えは、難しい理由ではなかった。
今まで知らなかったのは、情報を流す人がいなかったから。
アレイドが知っていたのは、その場に居合わせたから。
ただそれだけの単純な理由。

アレイド「しかも。────笑い事じゃねぇが、魔物を作ったのは俺の親父だ。だから魔物の情報は人並み以上だし、このカードだって魔物から作られた代物だよ」

さらに沈む。
若干、吐き捨てるような口調で語られた事実は、即座に整理できそうな事ではない。

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