SHINE and STAR
────娘はいつの間にか、私の手の届かない場所にいた。
気が付いたのはいつからだっただろうか。……いや、それが分からないのだから、手が届かないと嘆く事になったのだ。
特別、変化がなかったわけではない。悩み事を打ち明けてくれない娘の、揺れ動きながらも堪える顔を幾度も見た。
眼には光なし。『元気』という言葉を忘却、『感情』という意味を損失。生きる営みに価値観を得られなくなっていた。
……それでも私は、気が付かなかった。
近くに存在しながら、娘の“近く”にはいなかった。
己は本当に親なのか。そう、自らを問いただした事もあった。大体、娘が悩み事を相談しない時点で、私は親として認知されていなかったのかもしれない。
ただ、そのままでいる自信などない。だから私は考慮した。親として“娘の為になる”事を。
それは、娘を疎外させる事。
外界と交わる、他人と関わりをもつ事が悪影響なのだと独断をし、娘の意思に関係なく隔離させた。周囲との接触さえなければ、娘を染めるモノは確実に減る。孤独である事は、時に安らぎを生み出すはずだ。
……しかし娘の光は薄くなるばかり。
むしろ人間らしさを失い、空気のように意味もなく流れる毎日を送っていた。その姿は見る者の心を痛め、その様子は私の無力さを明確に証明していた。
そんな中、ある日を境に対照的な笑顔が戻る。否、それ以前にも戻っていたかもしれないのだが。
娘は、私に隠れてある人物と会っていたようだった。外出を禁じさせていたため、部屋の中での会合であったのだが。
部屋を通り過ぎる度、娘のものとは思えない笑い声が聞こえ、たわいのない話に花を咲かせているように思えた。
……耳を疑った。私にさえそんな会話をしないというのに、その人物に対してだけは小さな口を忙しく動かす。悔しいが、本当に楽しそうな口調だった。