SHINE and STAR
「なんだぁ、演劇か?」

「姫様って言ってたよね、あのオジサン」

「ってコトは……あの可愛いコが姫様? きゃー人形さんみたーい」

「マジか! うーわそれなら俺王子に立候補する!」

「本物見た事なかったけど、お姫様になるヒトってのは本当に可愛いもんなんだなー」

「うぅ、不公平よ……血筋の良さは顔の良さだなんて!」

ざわざわ。
フィルが宣伝効果を招いて取り巻きを作り出す。そのつもりもないのに、フィルは必要以上の大声で周囲の足を止めてしまうのである。

でも何故かとっても視線を感じる私。うん、私。注目されるべき怪獣はほとんど無視されているような気が。

フィル「第一なあ、姫様の半径1m以内にお前ごときの若造が近付くなど……でぇい離れろ離れろ! 姫様は神聖な方だ! 姫様は宝だ! 姫様は、姫様は、姫様は────」

シルク「あー、あー……」

姫様姫様と連呼して下さる故障気味機械フィルに加え、重なり、蓄積して下さる群衆の皆さん。

く、囲まれた! これは私を逃がさない為のフィルの作戦なのかな!?

……とか、そんなどうでもいい妄想は置いておいて、もはや私への注目は避けられない状況に。
フィルはともかく、私は何でもないのに注目されて恥ずかしいったらもう。

シルク「フィ、フィル? ね、もういいからやめよ?」

フィル「よくありません! ヤツは姫様という存在が如何に崇高か理解、いや教育させねば!」

いや、このままじゃアレイドどころか町の皆全員が教育されてしまうのですがっ。

右を見る、群衆。
左を見る、群衆。
後ろを見る、群衆。
上を見る、青空。よし、誰もいない────って飛べるワケもなし。
どうしようどうしよう。
取り巻きはもはや防御壁。柵。檻。本当に逃げ出すに逃げ出せない状況に陥ってしまった。

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