SHINE and STAR
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で。
そんな、勇気と元気を率いてドアを開けたらそこは断崖絶壁でしたー、みたいな一撃必殺系展開は気のせいに終わる。
いなくなっていたのは確かなのだけど、私がまごまごしている内にアレイドはいつの間にか帰って来てたのだ。

何処に行ってたの?などと訊こうとは思ったけど、上手くは訊き出せなかった。
まぁ色々と気になる事はあるものの、とりあえず一安心する私。
なので今はあまり気にしない事にした。

……あとは予定通りにゆっくり町を見て回り、店に入り、休憩したり。
やはり10年近く離れていた町とは言え、自分の記憶する町と構造が大きく変わっていたのには驚かされる。
それはそれで新鮮味があって良いとは思うけど、同時に私の身近にぽっかり空洞が出来てしまった事に寂しさを感じる。

アレイド「どうだった?」

でも、アレイドがいる。
その空白の前だってアレイドがいた。アレイドがいれば、昔も今も繋ぎ留めて空白を埋めてくれる気がする。

シルク「ええ、とても────」

「貴様、貴様貴様貴様貴様貴様ァ!!!」

シルク「え、えっ?」

ダ、ダダダダダ!
突如襲来する怒号、工事現場を思わせるその爆音! 私の声は見事に揉み消される!
あ、地均しか。
え、地均しかな?

「よくもよくもよくもよくもよくもよくも!!!」

シルク「う、わわわ」

ドドドドド!
けたたましい雄叫びを揚げながら工事現場が猛進して来る!
そうか、地均しではなく地鳴らしか。
でも工事現場はそんなに速く動けるのだろうか。
私、世間知らずなのかな。

アレイド「ははぁ、随分と手間取ったみてぇだな。よしよし。典型的で結構」

シルク「あっ、なんだ」

世間どころかすぐ近くの人物が分からなかった私。
地を鳴らして猛進する工事現場、その正体とは人間であり、私もよーく知っているフィルなのであった。

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