SHINE and STAR
◇◇◇

フィル「く……酷い目にあった。主に精神が」

敗北感のみならず肉体と精神の両方にダメージを背負い、ブツブツ不満を垂らしながらフィルは道を引き返していた。

普段より重量感の増した足を一歩、また一歩と運ぶ……その敗走の途中で、どうも頭に引っ掛かる事があるなと疑問が浮かび上がった。
何故。
何を理由に酷でなければならないのか、とこの件の原因を思い返してみる。

フィル「……あ」

間抜けな声。
あまりにも予想外のダメージだった為か、元来た道の半分ほどまでは重要な事、或いは単純な事を忘れていた。

原因には悪意が混在している。
否、悪意に貶められている。
思案の時間など必要ない、原因────加害者は奴だ。悪意の元凶は奴なのだ。

“フィル急ぐぞ! ヤツらがここにも来やがった!”

蘇る奴の言葉。
どうしようもなく沸き上がるフィルの怒り。

フィル「アレイドめ……! よくも私を陥れてくれたな!」

その通り、アレイドの言葉は罠だった。『ヤツ』=『魔物』と認識してもその場に魔物の存在などないのだ。

途端、フィルの足は重みを忘れた。
怒りを源に筋肉は急速に稼働し始めた。
全力で走った。
目指した。
駆けた。
追った。
落ちた。

フィル「ふぉ!?」

またも間抜けな声を漏らして真下へスライドするフィル。
モグラにでも成りたかったのか、その巨体は地下へ消え去るのだった。

これも悪意の一端。

そう、なんとも古めかしく且つ原始的な『落とし穴』という単純すぎる罠がそこにあった。
フィルは仕掛人の期待を裏切らず、罠に勝る単純さで思惑に嵌ったのだ。

フィル「……馬鹿な。今時このような罠に引っ掛かろうとは────恥ずかしい」

と、悔しさよりまず恥辱に顔を赤らめるフィルであったが、陥没したその頭上からは何やらひらひらと舞い降りるものがあった。
……何か、文字が書かれている。
フィルはそれを訝しげながら掴み取り、何気なく確認してみた。

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