ビギナーズ・アンラック
所詮、この世はオシロスコープ
連れてこられたのは美術準備室だった

この高校入学して3日

まだ、入ったことのない教室は山ほどある

というか、教室と体育館しか入ったことない

中に入ると、様々な美術用具が乱雑に置かれている

筆、バケツ、彫刻刀
描きかけのデッサンに石膏彫刻

その中央に居座る、書類の溢れた大きめなデスク

男はそこが定位置なのか、慣れた動作で椅子に座る

クルッと回ると
「ああ…、そこの空いてる椅子にどうぞ」

オレと涼は言われた通り、空いているパイプ椅子に腰を下ろす

最後に入ってきたのは朱葉は扉を閉めて、そこに寄りかかる

はっきり言って、さっきまで襲ってきたヤツの前を歩くのはかなりのストレスだった

猛獣を従えて歩く疑似体験には持ってこいだ

怖いったらない
いつ本能に目覚めて、カブリとやられることか

だが、朱葉もさっきのテンションはなく
今は、いたって普通についてくる

改めて見れば優等生然としている容姿
こっちが地だと言われても可笑しくない

「さて、先ずは自己紹介しましょうか」
そう、男が切り出す

「では、私から。私は葛原 宗一(くずはら そういち)。ここの美術教師です」
ここに連れてこられて、うすうす気付いてはいた

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