近くにいるキミ、遠いキミ(短編)
あれは高2のことだった。
台風が来ていて学校を早く帰らされた日。
ボクの両親もキミの両親も働いていて、
お互い家には1人ぼっち。
外は嵐。
大人しく部屋でテレビを見ていると、
しきりに鳴りだすチャイムの音。
玄関の扉を開けると
今にも泣きそうなキミが立っていて
ボクの家に飛び込んできた。
好きな女と2人っきり。
同じ空間に2人っきり。
高校生の健全な男が
そんな状況でどんな気持ちになるか
誰にだって想像できる。
けど、そんなことにはまったく気付かない
のんきなキミ。
ボクがいるから安心したのか
笑ってテレビを眺めている。
出来るだけキミに近づかないと決め、
少し離れた場所で携帯を
いじっていたボクは、
いつのまにか寝ているキミに気付く。
机にうつぶせて小さな寝息をたてるキミ。