愛す
eight.
――『ねぇ、どこに向かってるの?』
静かな車内に私の声が響く。
――勇悟はさっきから規則正しい吐息を立てて寝ている。
拓の車に乗り込んで30分程たっただろうか――
乗る時に伝えた私のマンションの場所は少し前に通り過ぎた。
「ん、もうちょいで着くって。
そう焦らない。」
拓はどんな時でもマイペース。
『…着くってどこに?
それに拓の家は逆方向でしょ。』
ライブ会場からは神龍のアジトと私のマンションは真逆の方向だ。
私の知っている限りでは神龍のアジトで拓は生活していた。
「着いた。」
――車が停止した場所は夜だから当然当たりは暗いが、よく見ると見慣れた場所だった――