何時か書くかもしれないもの
六弦(仮)
ふとギターのボディと弦を見つめていた目線をあげて彼の顔を見ると、彼も丁度私の顔を見ていたようで、ばちりと眼が合う。
瞬間、その顔が再び真っ赤に染まって。
ああ、こういうこところが駄目なんだと。
私は小さく疼く胸を抑えて思った。
普段、クラスでは物静かで、滅多に感情を表に出さないのに、放課後二人で残って話をしているときにたまに見せるこういう表情が。
私は君にとって特別なんだと、勘違いしてしまう。
そんな自分の思考に呆れて、無意識にため息が漏れる。恥ずかしさが心に覆いかぶさって顔が熱くなる。
…どうかしてる。
両手で顔を覆った私に、大丈夫、と心配そうに聞いてくる彼の声がかかった。
…だからそういう鈍感なところが嫌なんだよ、なんて言えるはずもなく。
言葉で伝えるのが苦手な私は、きょとんと呆けた彼の唇に、自分の唇を押し付けたのだった。
「六弦」