秘密の恋の始め方
「ねぇ、きみアイドルにならない? きみなら国民を悩殺できるよ!」
……なんて、怪しすぎる台詞を頂いたのは俺が中学3年生の春だった。
結果として、その誘いに俺は乗った。
乗ったけど、それは……。
「え? 奏太、この家出て行っちゃうの?」
「しょうがねぇだろ、俺アイドルになるんだし」
「……アイドルなんてほんとになれるって思ってるの?」
今にも泣きそうな目で、ユズコは俺を見上げる。
小動物みたいなそれにほだされるものかと中学生の俺も虚勢を張って、
「当たり前だろー。お前、俺を誰だと思ってんだよ」