いちご模様の赤い傘
「寒い、ですね」

俺は目の前の雨を見つめたまま彼女に話しかけた。

「そうですね」

彼女も雨を見つめたまま、驚いた様子もなく静かに答えた。

「雨宿り?」

「うん」

「止むまで待ってるの?」

「ううん」

首を振って、彼女は少し嬉しそうにはにかんだ。

「もうすぐお母さんが来るから一緒に帰ろうと思って」

「そっか、お母さんが傘持ってきてくれるんだ」

「いや……たぶん持ってないと思う」

じゃあ何で待ってるの?と聞く前に、彼女のほうが先に口を開いた。

「おじさんは何でここに立ってるの?」
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