いちご模様の赤い傘
「これ……」

俺は鞄をゴソゴソあさって、中からいちご模様の赤い傘を取り出した。

俺には似合わない、可愛らしい傘。

「お母さんと差して帰りなよ」

彼女のお母さんのとは、名字だけ違う名前が書かれた傘。

俺の大切な人の残していった唯一の忘れ物。

「え……いいんですか……?」

彼女は戸惑いながら、俺の押し付けた傘を受け取った。

傘を右手に持ったり左手に持ったりして一通り見回した後、彼女は不思議そうな顔で俺を見上げた。

「これ、おじさんの?」

「ち、違う違う」

趣味でこの傘持ち歩いてたら、ただの変人だ。
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