いちご模様の赤い傘
「昔の知り合い――というか、大好きだった人が忘れていったものなんだけど、今日持ってきちゃって。
なんとなく、返せるような気がしたんだ……」

小声でボソボソと言った俺の言葉を静かに聞いていた彼女が、突然空を見上げた。

「あっ!
雨、止みましたね」

俺もつられて空を見た。

「本当だ」

灰色の雲はまだどんっと横たわっているけど、雨は上がっていた。

タバコ屋の屋根からポタポタ雫が落ちる。

空を見上げてた俺の横で彼女は再び傘を見つめていた。

「あの……」

彼女の呼びかけに俺は視線を彼女に戻した。
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