いちご模様の赤い傘
「お母さんの、知り合いですか?」

懐かしい顔で俺を見つめながら、目をまんまるにしている。

たぶん、名前を見つけたのだと思う。

俺はにこっと微笑んで、頷いたような首を傾げたような曖昧な態度を取った。

「その傘はあげるよ」

そして、一番気になっていたことを聞いた。

ずっとずっと気になっていたことを。



「君のお母さんは、今、幸せ?」



本当は聞かなくても分かるよ。

隣の少女がとても幸せそうだから。

どうしても、ちゃんとした言葉で確かめておきたかったんだ。

そのために、この駅で降りてしまったぐらいだから。
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