いちご模様の赤い傘
少女の返事に安心して、俺は雨の上がった街へ歩き出そうとした。

「それじゃ」

俺は左手を振った。

「また、会えるといいですね」

少女は白い息を吐きながら、笑顔で手を振った。

大好きだった懐かしい眩しい笑顔で。

俺は小さく頷き、曇り空の真冬の街へ歩き出した。

俺は分かってた。

もう、きっとこの駅では降りないだろう。

もう一度振り返って、彼女の笑顔を焼き付けた。

遠ざかる俺に向かって彼女はずっと手を振っている。

俺の記憶の中で、彼女はいつでも笑顔で手を振っていた。
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