いちご模様の赤い傘
その時、急に彼女が目線を上げた。

ドキッとして、でもそれを隠すように冷静を装って彼女から視線をそらした。

間違いない、と思う。

寒さで真っ赤にした鼻とほっぺた。

凍えた手を吐息で温めている。



雨はシトシト俺と彼女の前に静かに落ちていく。

灰色の雲はついに街全体を覆い尽くし、行儀良く並んだ街灯たちに明かりが点った。



「寒い……」

彼女がポツンと呟いた。

止むまで待ってるつもりなのかな?

俺には目もくれずに、ひたすら空と雨とを見比べている。
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