雨が降ったら
プロローグ
今も覚えている。
13歳になったばかりの梅雨の時期。
あの日は、午後からパラパラと降りだした雨が、放課後には豪雨になって教室の窓を叩いていた。
そういえば母さんが朝、傘をもっていけと叫んでたな…と、ぼんやり窓の外を見つめた。
…言うこと聞いとけばよかった。
この雨のせいで部活は休みになるし、家の方向が同じでいつも一緒に帰っている親友は今日に限って滅多にひかない風邪で休んでいる。
てことはこの大雨の中、傘も持たずに心細く一人で帰らなくてはならないのか…
あきらめて教室を出て昇降口へ向かうと、雨は一層激しさを増している気がする。
「あれ?カサないの?私2本あるから、1本貸してあげるよ」
振り返ればそこにはクラスのマドンナが…………
…という展開を期待してちょっと佇んでみるが、もちろんそんな事あるわけもなく。
「…行くかー」
僕は意を決して一歩を踏み出した。