雨が降ったら
ここらへんは田舎だから、通学路は田んぼに囲まれていてあまり広くはない。
僕はちょっと端に寄ってその車をやり過ごそうとした。
その時。
バッシャーン!!!
僕の横を走り抜けようとした車のタイヤが、僕の横にあった大きい水溜まりを踏んで、
バケツの水を頭からかぶったような感覚と同時に、僕の目の前が一瞬茶色く染まった。
前髪からはポタポタと泥水が滴り落ちる。
「マジかよ……」
我ながら情けない声が出たと思う。
とりあえず顔にはねた泥水をぬぐっていると、前方でキキッとブレーキ音がして、たった今横を通った例の車がハザードランプをつけて路肩に停車した。
まもなく運転席のドアが開き、あわてたように一人の女の人が飛び出してくる。
「ごめんなさい!大丈夫?」
僕はその時。
心臓が、
止まるかと、思ったんだ。