雨が降ったら

車から出てきたその人は、20代くらいの女の人で薄いピンクのサマーニットの半袖セーターに白いフワフワのひざ丈スカートを着て、クリーム色の傘を差していた。


彼女は僕に駆け寄ると差していた傘を僕に傾けて、手に持っていた白いタオルで僕の顔を拭いた。

「あ、いや…いいっす!平気っす!」


はっと我に返って焦って声を出すと、やけにうわずってしまった。

傘を僕に傾けているせいで彼女の肩が雨に濡れている。

「ごめんなさい…びしょびしょだね…」


「いや、もともとこんなだったんで…」


「本当にごめんなさい。これよかったら使って?」

心底申し訳なさそうな顔で傘とタオルを手渡されて、思わず受け取ってしまった。


「いや!マジでいいっす!家すぐそこなんで!」

「いいから使って?家についたら捨てちゃって構わないから」


そうしている間にも、傘を僕に預けた彼女の髪や服が雨に濡れていく。


「じゃあ、本当にごめんね。気をつけて帰って!」

そう言って軽く手を振り、彼女は小走りで車にもどってしまった。

彼女の車が控えめにクラクションを鳴らして道の先の曲がり角に消えていくまで、

僕は動けずに、その場に突っ立っていた。


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中塚 雄大。最近ハタチになったばかりだ。

7年前のあの雨の日、


僕は、あの日をきっと忘れない。


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