特別な言葉なんていらない


「お前何かあったん?」


俺は心配になって茜に問いかけた。

どうせ答えてくれへんやろと思っとったけど、
茜は静かに口を開いた。


「…死にたくなった」

「死にたい?
何かあったんか?」

「全てがどうでもよくなった。あたしなんて生きてる価値ないの」

「そんなわけないやろ?
何があったか分からへんけど、俺は今日茜と会って良かったって思うとるで」


俺は茜の細い腕をつかんで目を見ながら言った。

茜は今にも泣きそうな顔しとった。


「会ったばかりなのにそんなこと思うわけないじゃん」

「そんなことない。
今日茜と会って、もっと茜のこと知りたいと思った。
俺と友達にならへん?」

「…やだ」


茜は下を向きながら言った。

俺はショックやった。

けど茜は俺が思っとるような気持ちで言うたんやなかった。


「あんたとは友達にはなりたくない。もっと違う関係でいたい」

「違う関係…?」

「あたし友達って言葉嫌いなの。
だから友達じゃない関係」


友達じゃない関係って言われても、よく分からへんかった。

けど、その言葉には俺と繋がっていたいって思いが込められとった。

俺はそんな気がしたんや。


その日を境に俺と茜は“友達以上恋人未満”という、

なんとも中途半端な関係になってしもうた。




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