特別な言葉なんていらない
「茜ー」
「何?」
「俺たちってさー…」
「“どんな関係?”とか言ったら殴るよ?」
「………」
茜と仲良くなれたものの、
絶対に『どんな関係?』とは聞かせてくれなかった。
聞いても答えてくれんのは分かっとったけど、
今の関係に疑問を持たんわけはない。
やから幾度か茜にどんな関係か聞こうとした。
けど、未だ俺たちの関係は分からんまま。
「茜さー、俺の気持ち知ってんねやろ?」
「………」
「ちょっ、無視は勘弁してや~」
あれから俺は、こうしてちょくちょく茜に会ううちに、
茜に完璧に惚れてしもうた。
俺は好きになったら即行動派やから、茜に告白した。
けど、茜の返事はNO。
「だって、あたし真の気持ち受け取れないもん」
「なんで受け取れへんの?」
「なんでもっ!
じゃああたしそろそろ帰るね」
そう言うと、茜はカバンを持って立ち上がった。
「えっ!?
もう帰るん!?」
「これから用事あるの。また今度ね」
茜は玄関に行き、靴を履くとドアを開けた。
俺はクッションを抱いて拗ねとった。
すると、茜は振り返ってこう言った。
「拗ねたら困るから言うけど、あたし真のこと好きだよ。
恋愛感情とは違うけど。
真はあたしの中で1番だからね」
そう言って微笑むと、茜は出て行った。
俺はやられてもうた。
好きな子にあんなこと言われて、
あんな笑顔見せられたら、嬉しくないやつなんておらん。
けど、茜の中にある暗い影なんて俺は気付けへんかった。
茜がずっと苦しんどったのに、俺は何もできひんかった。