特別な言葉なんていらない


それからも俺は茜と普通に会ったりした。

俺の中の茜への気持ちはどんどん大きくなってった。

やけど茜は絶対に俺の気持ちを受け取ることはなかった。

分かっとったはずやのに胸が苦しい。


やから俺はずっと心の内に秘めていたことを聞いてしもうたんや。

聞いたらあかんって分かっとったはずやのに。


「茜ってもしかして元彼となんかあったん?」


俺がそう言った途端、茜は表情を一気に変えて大声をあげた。


「真には関係ないでしょ!」


そう言うて家を飛び出した。


「茜!」


俺は茜の後を追った。

俺の中は後悔でいっぱいや。

聞いたらあかんって何度も自分の中で押さえとったはずやのに。

人間ってだめな生き物なんやな。

こんな時にぽろっと出てしまうなんて。


俺は走っとった茜の腕を掴んだ。


「茜っ…」


振り返った茜は泣いとった。

俺が泣かせてしもうた。

自分が嫌になった。

好きな女を泣かすなんて、絶対にしたくなかったのに。


「なんで聞くのよ!
思い出したくなんてなかったのにっ…
真の前で泣くなんて絶対に嫌だったのにっ!」




< 4 / 7 >

この作品をシェア

pagetop