特別な言葉なんていらない
それからも俺は茜と普通に会ったりした。
俺の中の茜への気持ちはどんどん大きくなってった。
やけど茜は絶対に俺の気持ちを受け取ることはなかった。
分かっとったはずやのに胸が苦しい。
やから俺はずっと心の内に秘めていたことを聞いてしもうたんや。
聞いたらあかんって分かっとったはずやのに。
「茜ってもしかして元彼となんかあったん?」
俺がそう言った途端、茜は表情を一気に変えて大声をあげた。
「真には関係ないでしょ!」
そう言うて家を飛び出した。
「茜!」
俺は茜の後を追った。
俺の中は後悔でいっぱいや。
聞いたらあかんって何度も自分の中で押さえとったはずやのに。
人間ってだめな生き物なんやな。
こんな時にぽろっと出てしまうなんて。
俺は走っとった茜の腕を掴んだ。
「茜っ…」
振り返った茜は泣いとった。
俺が泣かせてしもうた。
自分が嫌になった。
好きな女を泣かすなんて、絶対にしたくなかったのに。
「なんで聞くのよ!
思い出したくなんてなかったのにっ…
真の前で泣くなんて絶対に嫌だったのにっ!」