星くらげ。
雨色のお星さま
ひとりぼっちの夜。
雨に打ち消されてしまいそうなわたしを救ってくれたのは、貴方だった。
『やっと、見つけた』
パパによく似た低い声と共に、わたしの周りだけ雨が止む。
振り返れば、いつのまにかすぐ隣に黒いスーツを濡らした男の人がいた。
わたしを探しにきたの?
でもわたしには帰る場所がないの。
だから行けないよ。
強くくちびるを噛み締めたわたしに傘を差し掛けながら、貴方は少し困ったように笑って、
『一緒に帰ろう』
迷いなく差し出された手。
すがるようにその手を掴みとる。幼いわたしの手よりもずっとずっと大きなそれは、不器用に握り返してくれた。
包み込む暖かい温度に、我慢していた涙がこぼれ落ちた。
――ねえ。
あの時、わたしがどれほど嬉しかったか貴方には分からないでしょう。
どんな気持ちで、貴方に手を引かれていたのか。
涙と雨ど濡れた目で、真剣な横顔に何を見つめていたのか。
きっと分からないでしょう?
もしも。
もしも気づいてしまっても、どうかお願い、知らないふりをして。