恋の坂道発進―2010年バレンタイン短編―
「川島さんは、教習所内でも有名になってますから」
「私が有名??」
「ええ。どの指導員も、あなたの隣には乗りたくないんですよ」
あまりに悲しい言葉。
塩崎先生もそう思ってる?
私の隣には乗りたくない?
危険だからだけじゃない。
きっと、かわいくないから。
私は、反省もせずに開き直ってしまうから。
自分の足元ばかり見て歩く。
珍しく落ち込む私。
キャハキャハとうるさい女子高生の声にイライラしながら、教習所の出口の自動ドアの前に立つ。
「危ねぇって!!!」
どうやら、この自動ドアは一時的に故障していたらしい。
私は自動ドアにおでこをぶつけて、その場にしゃがみ込んだ。