恋の坂道発進―2010年バレンタイン短編―
遊びに行っているような大学だから毎日暇なんだけど、真面目に教習所へ通う気になれない。
だって……
私はいつも怒られる。
まだ始まったばかりの運転も、失敗ばかりで先生に目をつけられている。
多分、噂されている。
“川島はいつか教習所の壁を突き破る”って。
私、大学生の、川島なずな。
どこにでもいそうな普通のバカっぽい女。
超不器用で、何をやってもうまくいかない。
先週お年玉で買ったウィッグも全然ちゃんと付けれなくて……
家から出てすぐに、パーカーのフードの中にほとんど落ちていた。
だからって自分で巻き髪を作るのも苦手で。
右側は内巻き、左側は外巻き……という情けない仕上がりになる。
こんな私が自動車の運転免許を取ろうって思うことが間違いだった。
ここへ来るたびに、それを実感する。