恋の坂道発進―2010年バレンタイン短編―
「おい!張り紙張ってあるだろ?ちゃんと読めよ、川島!」
しゃがみ込んだまま、声の主が誰なのか考える。
この声、このえらそうな口調……
まさか、塩崎先生?
嬉しくて、立ち上がるのをやめて、しゃがみ込んだままおでこを押さえた。
「おい!大丈夫か?ケガしたのか?」
肩に回された手にドキドキして、本気で立ち上がれなくなった。
「川島?」
「塩崎先生っ!!」
顔が近くにありすぎて、びっくりして大声を出してしまった。
「ほらぁ、見てみろよ。故障中の為、手でお開けくださいって書いてあるだろうが。バカだな、お前は」
私の横にしゃがんでいる塩崎先生が、自動ドアの張り紙を指差した。