恋の坂道発進―2010年バレンタイン短編―
私は甘いコーヒーを一口飲んた。
「私、頑張ります!!」
塩崎先生もコーヒーを一口飲む。さっきまでタバコ臭かった部屋の中がコーヒーの匂いに包まれる。
「よし、じゃあ。特訓してやる。今、時間あるか?」
塩崎先生は、ノートを持っているかと聞き、私のノートに図を書き始めた。
「ここでな、ハンドルを切り始めるんだ。視線はこっちで」
字が綺麗な男性は、それだけで頭が良さそうに見える。
塩崎先生は、どの学科教習の先生よりも綺麗な字だった。
真剣に教えてくれる塩崎先生の横顔を見つめる。
「怖がってハンドルを切るから、中途半端になる。もっと自信を持って・・・・・・ おい!聞いてんのか?」
「はい。こんな出来の悪い私にそこまで真剣に教えてくれるなんて、塩崎先生は優しすぎですよ」
一瞬目を合わせた後、首をかしげながら塩崎先生は呆れた顔をした。