恋の坂道発進―2010年バレンタイン短編―
6.坂道発進
―坂道発進―
バイト先の先輩に、1時間かけてレッスンしてもらった。
ウィッグの付け方。
キャバ嬢みたいなクルクルカールにバッチリメイク。
こんなことしても、塩崎先生の気持ちは私に向くはずないんだけど。
わかってるんだけどね。
女の子、してみたかった。
最近サボってたおしゃれ。
手抜きメイク。
男の影のない生活だったから。
「指名すんなって言っただろ」
不機嫌な顔と声。
それは愛情の裏返し!って勝手に信じてる。
「坂道発進は指名していいって言ってくれたじゃないですか。うふふ」
「気持ち悪っ!!そんなこと俺、言ったかな」
わざとらしく、しかめっ面を作る塩崎先生。
どんな顔も好き。