恋の坂道発進―2010年バレンタイン短編―
「坂道発進までようやく来れました!」
「S字、なんとかできるようになったみたいだな」
教習原簿を眺めながら、目を細める。
コンタクトだって言ってたっけ。
家では眼鏡とかかけちゃうのかな。
似合うんだろうなぁ。
「だから、お前は・・・・・・ 俺ばっかり見るな。それと、なんだ?そのやきそばみたいな頭!!まつげに毛虫みたいだし!」
塩崎先生は、私のやきそばを引っ張って、おもいっきりバカにした顔で私を見る。
「かわいいって言って欲しくて」
「そのやきそば頭が?このケバい化粧が?かわいいと思ってんの?」
うううぅ。
へこむ。
わかっていたことだけど、すんごい冷たい目で見るから、へこむ。
「いつもの方がかわいいと思うけど」
え?
今、“かわいい”って?
聞き間違いじゃないよね?