恋の坂道発進―2010年バレンタイン短編―
私はエンジンをかけようとした手を止めて、塩崎先生の腕を掴んだ。
びっくりした顔の塩崎先生。
びっくりしているというより、恐怖を感じている顔??
「なんだよ!!」
「かわいいって言った?」
「今日のお前よりは、いつもの方がマシだって言っただけだよ!」
「嬉しい!」
「そんな、目をキラキラ輝かせて喜ぶな!!誤解すんな、ドアホ」
教習原簿で頭を叩かれる。
快感!!
やっぱり私ってM??
「それでは、坂道発進がんばりまぁす!!」
ルンルン気分でエンジンをかけ、車を進める。
塩崎先生以外の先生の教習は、落ち着いていられる。
でも、失敗したとき、ものすごく落ち込む。
申し訳ないな、この先生怒ってるかな?って気になってしまう。
でも、塩崎先生だと、それがないんだよね。
安心するっていうか。
わかってくれてるっていうか。
とにかく、失敗を恐れずに積極的に運転できる……