恋の坂道発進―2010年バレンタイン短編―
親に出してもらったお金だから、やめるわけにも行かない。
仮免許で落ちた友達をバカにしていた数年前。
きっと、私はすべてにおいて新記録を作るだろう。
何度も何度も落ちて、誰も私の教習車に乗りたくないって言うだろうな。
次の運転講習まで20分。
温かいコーンスープを自動販売機で買って、ベンチに座る。
近くにいた女子高生の声が聞こえてくる。
「コーンスープとか笑えるし!!」
「最後の一粒が絶対取れないんだよね~」
「そうそう!最後、缶の底をポンポン叩くんだよ!」
単独行動は苦手じゃないけど、こういう時、ちょっぴり逃げたくなる。
よ~し。
こうなりゃ、女子高生の思惑通りに・・・・・・
缶の底をポンポンと叩いてみる。
せっかく乗ってあげたのに、女子高生はもう違う話題で盛り上がっていた。
あぁ、情けない。