恋の坂道発進―2010年バレンタイン短編―
わざわざバレンタインの日の夕方の時間に予約を入れたのは、夕方なら塩崎先生が終わるのを待っていられると思ったからだった。
いわゆる“待ち伏せ”・・・・・・
言い方を変えれば、ストーカーともいう。
でもさ。
その計画は失敗だったと気付く。
そりゃそうだ。
考えることはみんな同じ。
駐車場には、女の子がたくさんいた。
塩崎先生の車がどれなのか私は知らない。
でも、今、知った。
あの車。
みんなが集まっているあの車。
濃いグレーの大きめの車。
普通だけどかっこいい車。
塩崎先生らしいなって感じの車。
恋する気持ちって怖いものだと思った。
もし、ボロボロのへんてこ車に乗っていたとしても、それがかっこいいと思えてしまうんだろうな。