恋の坂道発進―2010年バレンタイン短編―
8.2月15日
―2月15日―
バレンタイン翌日は、朝イチの予約を入れていた。
何も考えずに予約を入れたことを後悔した。
こんなブルーな気持ちのまま、朝から教習所に来るのは辛い。
先生はまたしてもHGだし。
って、どんだけ縁があるんだよ。
「ひとつだけもらえましたよ。くくく」
HGの気持ち悪い笑い声のおかげで、少し元気が出た。
「どうせ、義理でしょ?」
「義理でもなんでもいいんだよ!!もらえたんだから」
HGを好きになれたらどんなにいいだろう。
一瞬でもそう思ってしまった自分の頭を叩く。
ありえない。
「ゲホゲホ」
車の中の密室で咳をするHGに文句を言う。
「うつさないでくださいよ~」
「今、指導員の間で風邪が流行っていてねぇ。塩崎先生も風邪なんですよ。他にも3人くらい風邪だし」
風邪?
塩崎先生、昨日元気そうにチョコ受け取ってたのに。
風邪引いてるんだ。