恋の坂道発進―2010年バレンタイン短編―
塩崎先生の仕事の終わる時間に行くことも考えた。
でも、また女の子がいるような気がした。
私みたいに昨日渡せなかった弱気な女の子が。
1日遅れのバレンタインに、勇気を出す子がいるかもしれない。
だから、煮物を作り終えるとすぐに教習所へ行った。
本当は直接渡したい。
でも、ただ食べてもらえればそれでいい。
塩崎先生へ愛を込めて作ったこの煮物を・・・・・・
届けたい。
私は、あの人にお願いすることにした。
そう、何かと縁のあるあの人。
受付の女性に呼び出してもらったのは、HG。
HGは学科教習も担当しているから、ちょうど休み時間を狙って・・・・・・
「どうしたんですか?」
不思議そうな顔をしているHGに、気持ち悪いくらいの笑顔を向けた。
「何かたくらんでいますか?」
「はい!たくらんでまぁす」