恋の坂道発進―2010年バレンタイン短編―
「てか、塩崎ってチョーかっこよくない?」
「やばいよね!」
「今日こそ、塩崎がいいなぁ」
女子高生の話し声に耳を傾ける。
ミニスカートなのに、さらにスカートを折って短くしようとしていた。
誰だろう。
塩崎って。
先生?
私はまだ3回しか運転教習してないけど、お腹ぽにょぽにょのおじいさんと、タバコ臭くて感じ悪いおっさんだったよ。
かっこいい先生なんて、この教習所にいるとは思えない。
でも、少しだけ心が躍る。
高校を卒業してから、恋とは無縁の生活をしていた。
コンビニのバイトと、居酒屋のバイトに明け暮れ、恋愛をするのが面倒だと最近は感じていた。