恋の坂道発進―2010年バレンタイン短編―
「俺に用って?」
やられた。
HG、恐るべし。
まさか、本人を連れてくるなんて。
しかも、今教習中だと思ってた。
「ああああ、あの・・・・・・ お風邪を召されたとお聞きしまして」
妙な日本語の私に、塩崎先生は笑い出す。
「ひとり暮らしの寂しい俺に、差し入れ?」
私が持っていたお弁当箱に顔を近付けて、クンクンとにおいをかぐ。
かわいい顔。
「うまそぉ~な匂い」
にこって笑って、私の手から煮物を奪う。
「ありがたく、いただきます」