恋の坂道発進―2010年バレンタイン短編―
「リクエストしていい?カレー食いたいだけど。作って来てくれる?」
塩崎先生は、車の鍵を開け、後部座席から昨日のお弁当箱を私に渡した。
「ごちそうさま。うまかったです。お前の料理に惚れた」
ほ、惚れた?
あ、料理に・・・・・・だよね?
「で、チョコは?」
「はい。あの、これ・・・・・・ 1日遅れですが、バレンタインのチョコ、受け取ってください」
目を閉じて、ただチョコを先生の前に差し出した。
「バレンタイン当日以外は、義理チョコは受け取らないんだけどなぁ、俺」
「本命なら受け取ってくれるの?」
「本命なの?川島・・・・・・」
私は目を開けて、大好きな塩崎先生の顔を見つめた。
いつもの顔とは少し違う。
教習中には見せてくれたことのない柔らかい表情。