恋の坂道発進―2010年バレンタイン短編―
何も言えずに、ただ緊張している私に塩崎先生は言う。
「手作りチョコだと思ったのに。残念。今度、手作り作ってくれよ」
声が出ない。
首をたてにかくんかくんと振ってみる。
うまく動けない。
「高速教習、俺を指名するんだろ?」
「・・・・・・」
また首をぎこちなくたてに振る。
「じゃあ、まだ先生らしくしとかないとな。免許取れたら祝ってやるから、俺んち来い!ハンバーグでも作ってよ」
信じられない。
信じられない。
塩崎先生が、私を見つめてくれている。